ITC
の動き方 企画編
これは ITC がプロジェクトに参画して仕様書を取り纏めるまでにどのようなステップを踏んで進めていくのかを紹介するものです。事例をもとに構成していますが、説明用に加えた点や事情により省いた点もあり、事実そのままを示すものではありません。
プロジェクトの立ち上げ
提案採用の連絡を受けたあと、佐伯と岡田はすぐに企業を訪問してプロジェクト事務局と進め方やスケジュールについてすり合わせを行った。
そして、先ずはプロジェクトメンバーの意識合わせと今後に向けた協力体制をしいていただくことが重要ということで、キックオフミーティングの開催をお願いした。
キックオフでは、メンバーを一同に集めて社長からプロジェクトの意義やそれに対する期待についてお話をしていただき、それに応えてリーダーから実現に向けた宣言とメンバーに対してこれからの長期間にわたる協力をお願いするようにした。次いで、佐伯からはプロジェクト成功のためのポイントを述べてメンバーに積極的な参画を促し、岡田は当面の進め方について説明を行い、どの程度の作業負荷が発生するのかをメンバーに意識してもらうようにした。
経営ヒアリングの実施
キックオフと前後して、経営層に対して経営方針や企業を取り巻く環境認識についてのヒアリングを行った。経営ヒアリングはプロジェクトの方針を決定する際に重要なインプット情報となるし、早い時期から経営層をプロジェクトに巻き込んでいくためにも必要なタスクである。
ヒアリングでは、予め手渡しておいたレジュメに従い、話しがしやすい会社概要と経営理念から始めて、経営目標と続け、次第に現状認識から問題点、今回の取り組みへの期待へと展開して経営の本音を聞きだすことに努めた。
SWOT 分析から CSF (重要成功要因)設定
プロジェクトの具体的なステップは現状の把握から始まり、次に現状分析に基づいた課題の設定へとつづく。
先ず、大きな課題や環境認識を整理するためにプロジェクトで SWOT 分析を実施した。佐伯が資料をもとに考え方と作業内容を説明したが、進め方については
ITC が一方的に主導するのではなく、メンバー参画型で意見を集約しながら、課題や環境についての認識を整理していった。全社的な整理が必要なために当日欠席したメンバーについても宿題という形で
SWOT 分析のカードを提出していただき、後日、追加して全体にまとめた。
次に、 SWOT 分析の結果からITCプロセスにしたがってカード合わせを行い、実現すべき目標(
CSF )を定義した。ここでは集約カードを模造紙上に並べて、全員がこれを囲んで議論し、 ITC
は助言などでサポートしながら各自の意見をくみとりつつ全体目標の整理を進めた。整理された目標については、経営ヒアリングで聞き取った経営層の思いともすり合わせて、実現に向けた優先順位を設定した。
成熟度判定
課題を考えるには、一般的な基準に照らして自分たちがどのレベルにあるのかを把握し、どこが足りないのか、あるいは、さらにレベルアップを図るためには何が必要なのかを考えることが大きな動機付けになる。そのために、ここでは
ITCA から提供されている成熟度診断シートを使用して現在の業務やIT化のレベルチェックを行った。
これについては、ミーティングで成熟度診断の基本的な考え方とシートの記入方法を説明し、持ち帰りで各メンバーに記入をお願いした。そして、次のミーティングで記入結果を各自に発表させながら、評価のバラつきを整理して全体としてのレベル評価をまとめた。
この結果、 SWOT 分析でも示されていた企業の強みと弱みがより明確になった。
業務分析
SWOT 分析と CSF 設定で得たられた課題を念頭に置きながら、営業や製造、設計など個別業務ごとにヒアリングを実施し、現行業務の運用やそこでの問題点を整理した。現行業務分析は
CSF 設定によって定義された課題の裏付けをとるとともに、新業務設計の検討ベースとなる重要な情報である。
ここでは、あらかじめ事務局から提供された資料をもとに ITC がたたき台となる業務フローを作成し、ヒアリングではそれを使いながら実際の業務の流れを確認して、現場で発生している問題点を聞き出すようにした。同時に、
CSF で課題とされたものを実現するには何が必要なのかを問いかけ、現場の担当者に取り組みへの動機付けを与えようとすることも心がけた。
ヒアリング後、たたき台に内容を反映させて現行業務フローを完成した。問題点は業務機能や担当部署と関連つけながら一覧表に整理するとともに、フロー上にもプロットして、業務のどこでどのような問題点が生じているのかが一見してわかるように工夫した。
中間報告
経営戦略企画(現状業務分析から CSF の設定まで)が完了した段階で、経営層に対して中間報告を実施し、その内容に対する承認を得た。
プロジェクトの動きについては毎週の経営会議でも会議メンバーでもあるプロジェクトリーダから報告はなされていたが、改めてプロジェクトからの報告という形をとることで、経営層に認識してほしい問題点や改善案を示し、これから進める業務改革に対するよりいっそうの支持をお願いするというアピールの場とした。
また、トップからのプロジェクトに対する要望もここで吸い上げて、会社としてのベクトルをあわせることも狙いにはあった。
新業務の設計
中間報告も終わり、課題や方針についての承認を得て、作業は新業務の設計に移った。
事前作業として、 CSF を各部署に展開して業務ごとの目標設定をお願いし、さらに、それに向けてどうステップアップしていくのかについての具体策をアクションプランとして整理していただいた。そして、これをミーティングで各部署から発表していただき、それに対する他部署からの意見も取り入れて内容を調整していただくようにした。これは、営業は営業、設計は設計という形でどうしても部門ごとにとらえがちとなるので、皆で集まって部門を越えた議論をすることで、具体策の有効性や全体としてのバランスをチェックしようという狙いによるものである。
具体策については、以降のシステム化要件とのつながりも考えて、業務だけで実現できる施策とシステムが必要な施策という性格分けもお願いした。
次に、いよいよ新業務の設計となる。インプットとなる情報は現行業務フローと問題点一覧、 CSF
から展開した部署別の目標と前掲で整理されたその実現策である。
ミーティングではプロジェクターで現行フローを前面に投影し、各部署の実現策を盛り込むことで新業務がどう変わるかを画面上のフローに反映させながら確認していった。フローを見ながら部門に関係なくメンバー全員で各施策の有効性や実現性について議論しあいながら、新業務の整理を進めた。
ここでの検討を受けて、 ITC で新業務フローを作成した。そこでは現行業務と変わる部分や新たにシステムが必要となる部分についてマークを付けて一見してそれらがわかるようにした。
システム化要件の整理
新業務フローが整理されたあと、フロー上でシステムが必要とされた機能をくくり出し、システム化要件として一覧表に整理した。そして、機能概要を明確にするために、各機能に関係するメンバーに対してそこで実現してもらいたい事柄や気になる点について書き出していただき補足説明とした。また、各機能について、その必要度合い(必須か、必要か、あれば助かる程度か)についても業務目標との関連などをもとに、目安として記入していただいた。
ただ、システム化要件についてはユーザに対面する外部的な機能だけでなく、内部的なシステム連携などについても押さえておく必要がある。そのため、現行システムについて情報システム担当と打ち合わせを行い、新たに置き換える部分を整理し、現行をそのまま残す部分については新システムとの連携をどうとるかについての確認を行った。
システム仕様書の作成
調達にうつるために、これまで検討してきたシステム化要件を整理してシステム仕様書を作成した。これは
RFP として提案要領とともに依頼先に提示することになる。
システムの仕様として、業務要件は特に重要なものだが、それ以外にも明確にしなければならない条件が多々ある。これらには業務要件から導かれる条件(モバイル環境や運用条件など)と一般的に満たすべき要件(セキュリティや保守体制など)の2つの面があるが、いずれも情報システム担当と打ち合わせながらその内容をまとめていった。また、ネットワークなどシステム基盤についても、どこまで見直しを行うのかを情報システム担当と検討した。
(整理された仕様書の概要サンプルについては添付資料を参照)
最終報告
最後に、整理したシステム仕様書をもとに経営層に向けて最終報告を行い、業務要件やシステム化の条件に対する承認を受けて、次の調達にうつることになった。
なお、経営からは新システムの導入効果を明確にするようにとの注文も出された。
また、 ITC からはアクションプランとして整理されたものにはシステム化を待たなくても実現できる業務施策も多くあるので、これらを進めるためにフォローミーティングを毎月行うことを提言した。企業を変えていくにはシステム化だけでなく業務面での改善も重要なことであり、それができないと十分な効果は期待できない。そのため業務施策のフォローも重要であり、調達や導入と並行しながらこれを進めていく必要がある。
次は、提案要領を作成し、仕様書と合わせて業者に提案依頼を行うステップに入る。
ITC の動き方 業者選定編
参考:システム仕様書 実際のものとは内容は変更しています。 |